DeNAのキュレーションプラットフォーム事業はなぜ失敗したのか?

公開日: : 最終更新日:2017/08/03 社会保障・経済・時事

      

マネジメントの難しさを教えてくれた事例

先日大手IT企業「DeNA」が運営する医療系キュレーションサイト「WELQ」の盗作問題を皮切りに、次々とキュレーションサイトが閉鎖された事例が話題になりました。

ですが、一体なぜこんな事が起こってしまったのでしょうか?的な記事は意外と少ないように感じます。

私自身今回の騒動は、組織マネジメントの難しさ、組織構造の最適化、権限の委譲など、負のベンチマークとして学べる事がとても多いように感じます。
それと同時に表面上には見えない“組織維持の難しさ”を感じずにはいられません。

というわけで、今回の事例を私なりに簡単に分析してみたいと思います。

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職能別から事業部別の組織へ

職能別(営業部、経理部など)で組織されている企業は構造上ボトムアップが起こりにくく、意思決定の際にどうしてもスピード感に掛けてしまいます。

ですが、そもそも職能別で組織されている会社は企業性質が“大量生産”の側面が強いので、トップマネジメント側からすると意思決定の際にボトムアップの重要性は意外と低かったりするんです。

「固定費を分散させるために大量生産だ!」
「マニュアル通りにやれば必ず同じものができるんだ!」
「とにかく同じものを作って作って作りまくれ!」

このような感じで大量生産が前提にある企業は仕事がマニュアル化された単純作業であるが故に、意思決定のスピード感はあまり意識されない傾向にあるわけです。
もちろん職能別で組織されている全ての企業が当てはまるわけではありませんが、その傾向はあるように感じます。

で、そのような企業が既存事業規模の拡大に従いリスク分散のために事業の多角化を図ろうとした際、そこで初めて意思決定スピードの重要性を認識するんです。
当然その問題点は改善しないといけないわけですから、必然的に組織の再編成をする必要が出てきます。

もう少し砕いて言うと、大量生産では企業の成長が望めないと判断した場合、各商品ごとのアイデンティティーを追求するために組織の編成が行われるといったイメージ。
具体的には、重要な意思決定権限を事業部の長に委譲し、意思決定までの工程を少なくすることで事業の発展にスピード感を出させるといった感じですね。

このようにして企業の発展と共に、組織が職能別(専門技術のプロ集団)から事業別(各商品のプロ集団)の組織へと再編されていくわけです。

DeNAは事業別組織のデメリットを体現してしまった

職能別組織は、開発、営業、購買と、商品の種類に関わらず各専門技術に従って仕事を進めていくわけですが、事業部別に組織された集団は各商品ごとに開発、営業、マーケティングなどの人材が割かれているので、特定の商品に対しての専門知識をより深める事が出来るようになります。

その一方で特定領域だけに精通してしまうので、視野が狭くなり、また、事業部間でのセクショナリズムが起こりやすくなってしまいます。
このセクショナリズムがプラスの方向に働けば良かったのですが、今回の一件は残念ながらマイナス方向に働いてしまったようです。

セクショナリズムと言ってもその源泉は様々で、例えば、事業部長からの圧力等の外因的要素もあるでしょうし、逆にライバル意識から「〇〇事業部には負けたくない!」などという内因的要素もあるでしょう。

どちらにしても同じ企業内の“仲間”であるはずが、様々な要因から“敵”に変わってしまうわけです。

私自身今回の一件、このセクショナリズムが根底にあるのではないかと踏んでいます。

相乗効果と紙一重の排他的傾向

おそらくDeNAのキュレーションプラットフォーム事業部では、キュレーションプラットフォームという大きな括りではなく、各キュレーションサイトごとに人員が割かれていたのではないかと推測しています。

各サイト毎に人員を割くということはそれだけ人件費が嵩むということになりますが、それだけDeNAにとっては目玉事業の一つであり、同時に各サイト毎で競わせることにより相乗効果が期待できると踏んでいたのでしょう。

ですが、実態は他サイトに勝つことを口実に上司に厳しいノルマを課せられ、部下は1日のノルマ記事数を確保するために必死になり、校正校閲もままならない状態でリリースを繰り返していたのでは?と推察できますよね。

その状態が恒常的に続く事で、部下の意識が「他サイトより良いものを作りたい!」という本来の目的から逸れ、いつの間にやらノルマをクリアするという目的に置き換えられていくようになってしまったのでしょう。

これは事業別組織の相乗効果のメリットを享受できず、逆に排他的傾向を生んでいたと解釈する事ができるかと思います。

つまり、過剰なまでに競争意識を煽られ、ノルマ達成というプレッシャーから逃れたい一心で無校閲でリリースを繰り返した結果、今回の盗作問題に発展してしまったのではないかと読んでいるというわけです。

事業部別組織の限界か?

事業部組織は権限が分散するのでミドルマネジメント層が育ちやすい反面、トップマネジメント側の大局的なマネジメントが難しい側面があります。

ただ、いくら事業部の長に権限を委譲したとはいえ、独立した組織ではなく企業内の一事業部であることに変わらないので、問題が発覚した際には最終的にトップマネージャーである社長さんが責任追究される形になるんです。

このように、事業部組織は各商品ごとの質や利益を追求する為のスピード感を得る代わりに、本当の意味での大局的なマネジメントを犠牲にしてしまうんです。
権限委譲はそのようなリスクも孕んでおり、今回の事例でその事が顕在化したわけですね。

今後組織を編成する上でこの問題は重要になってくるように感じています。

キュレーションサイトの未来は?

今回の件でキュレーションサイトの脆さが露呈したわけですが、今後キュレーションサイトの未来はさらに暗くなっていくような気がしてなりません。
なぜなら、専門的なキュレーションサイトは需要がある一方でエビデンスの確保に莫大なコストが掛かるからです。

「WELQ」を例に出せば、医療素人記事だったのが医療プロの校閲を受けてのリリースに変更されるわけですから、それだけ時間と人件費が嵩むのは想像に難くありません。

能率やコスパを考えると一つの記事に多くの時間を割きたくないというのが企業側の本音だと思いますが、その思惑とは対極するように今後再発防止策をとる必要性に迫られる事は必至なので、ダブルチェック、時にはトリプルチェックの必要性だって出てくるでしょう。
すなわち、その分だけ余計にコストと時間が必要になってくるという事です。

その状態で採算がとれるなら良いですが、こうなればフィランソロピー状態と言っても過言ではないかと。

とはいえ、これは医療情報に限った時の話。

例えば、趣味やファッション系の記事に関してはエビデンスの必要なものは少ないでしょうから、編集機関がしっかりと校閲するような体制を整えることが出来れば問題なさそうな気もします。
強いて問題を挙げるとすれば責任の所在と転載の際にかかる費用くらいでしょう。

今後DeNAはWELQを闇に葬り去るのか?はたまた何か画期的なシステムを開発して以前のような勢いを取り戻すのか?
今後に注目したいところです。

まとめ

というわけで色々と語ってみましたが、あくまで一個人の推測にすぎないという点はご了承ください。
私も企業の内部まで知っているわけではありませんので・・・。

ただ、DeNAが採用している「事業部組織」という組織構造にはこのようなリスクが考えられるという点は間違いなく言えると思います。

一応私の結論としては、ミドルマネジメント層やロワーマネジメント層のマネジメント力の欠如、ボトムアップが本当の意味でのトップまで届いていなかった事、トップマネージャーが大局的な判断を行えなかった事が今回の一件を引き起こしたのではないかと考えています。

では。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
お役に立てれば光栄です。

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