下半身強化によってコントロールとスピードはなぜ向上するのか?
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球速アップトレーニング, 西武ライオンズ
指導者のみなさん、下半身とコントロールの関係を分かりやすく説明できますか?
元理学療法士兼西武ライオンズファンの新常です。
突然ですがみなさん、投手にとって大事なのは足腰と聞かされてなんとなく納得していませんか?
確かに投手にとって足腰はとても重要です。
では、なぜ足腰が重要なのでしょうか?
それを言葉で説明することは実は結構難しい。
制球力をつけるため、球速を上げるために下半身の強化は確かに大事です。
ですが、その関係をうまく説明できないのが現状でしょう。
そこで今回は、その理由を理学療法士としての視点からめっちゃ簡単に説明したいと思います。
それを知ることで、普段のトレーニングが何倍も効果を上げることになると思いますよ。
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球速とはなんなのか?
球速を一言で言えば、「どれだけ腕を速く触れるか」につきます。
考えてみれば当然の事なんですが、速く強く腕を振ることによってしか速い球を投げることは出来ません。
その強く速い腕の振りをするためにみんなトレーニングをするんです。
制球とはなんなのか?
制球を一言で言えば、「腕の振りがどれだけ同じ軌道を描けるか」につきます。
要は、いいコースに決まった時の腕の振りをどれだけ高度に再現できるかという事です。
同じ角度、同じタイミング、同じリリースポイントで毎回腕が振れれば概ね同じコースに制球する事ができます。
後の細かい微調整は指の感覚に依存しますが、基本的には腕の振りを同じ軌道で安定させる事が出来るかどうかが制球力向上の大きな鍵になります。
事実から逆算して考えてみる
ここでいう事実とは、上であげた、
①どれだけ速く腕を触れるか
②どれだけ腕の振りを再現できるか
の二点です。
この球速と制球向上の鍵を握る二つの事実から、①と②を向上させるためにはどうした良いのか?というのを逆算して考えてみましょう。
① 腕を速く振るためには?
投球動作において腕を振るために必要な筋肉は沢山あります。
例えば、リリースの際に肘が伸展するのを補助する上腕三頭筋、弓のように胸を張るために必要な菱形筋、強く体幹を回転させるための腹直筋、腹斜筋などなど、投球動作における様々なフェーズで必要な筋肉は沢山あります。
それでは、投球動作において腕を強く振るためにもっとも必要な事とはなんでしょうか?
それは、土台の安定です。
考えてみれば何てことはないんですが、ぬかるんだマウンドとしっかり整備されたマウンドがあった時、果たしてどちらが強く腕を触れるでしょうか?
当然しっかり整備されたグラウンドですよね。
下半身が弱いというのは、まさにそのぬかるんだグラウンドで常に投げているの同じ状態。
踏み込んだ足が着地の衝撃と体重移動の負荷に耐えられなくなり、膝が左右へと動揺(グラグラする事)を起こし、まるでぬかるんだマウンドで投げるかのような状態になります。
そのぬかるんだ状態をしっかり整備してあげる事によって、上半身の筋力向上がなくても腕がしっかりと振り抜けるようになり、自身が持っているポテンシャルを最大限発揮する事ができるようになります。
だから下半身の強化は大事なんです。
ただ厄介なのが、本人がその下半身の弱さに気がつかない事が多いんですよ。
なので、周りの指導者がしっかりと指摘してあげる必要があります。
②同じ軌道で腕を振るためには?
これも基本的には球速アップの理論と同じです。
例えば、あなたがダーツをしているとしましょう。
その時、あなたは細いロープの上に立っていると想像してみてください。
どうでしょうか。
手元が揺れてコントロールが定まらないのは想像に難くない思います。
ダーツのような肘から先のみを使う運動ですらその有様なわけですから、野球のような多くの関節を使う動作では尚更コントロールが難しくなります。
すなわち、土台が安定していないと安定して同じ軌道で腕を振る事が難しくなるという事です。
これが制球安定と下半身強化の関係です。
ただし、球速の場合と違い同じ軌道で腕を振るのはかなりの難題です。
球速アップと制球アップ、両者ともに下半身が非常に重要な役割を果たすにもかかわらず、なぜ制球だけは難題なのか?
その理由を以下で説明していきます。
強く腕を振るのは体の自然な動きに任せればいいが、同じ軌道を描くためには感覚が重要
速い球を投げるための腕の振りは、どれだけ腕の振りを全身でサポートできるかが鍵になります。
なので特別な訓練というよりは、強く腕を振るための筋力とフォームを取得してしまえば、それらが維持できている期間は比較的安定して球速を出すことが期待できます。
しかし、同じ軌道で腕を振るというのは事情が違います。
こちらは筋力的な部分よりも技術的・感覚的な部分に依存するからです。
例えば、現在のNPBでは150キロを連発する投手が増えてきてますよね。
ですが、その150キロを正確無比に同じコースに制球できる投手がどれだけいるでしょうか?
それが答えです。
結局のところトレーニング等で強く腕を振ることは出来るようになっても、その腕の振りが1回目と2回目では大きく異なる結果、制球がバラバラになってしまうんですね。
この腕の振りがバラつく理由の一つが貧弱な下半身。
まさに、土台がユルユルすぎて体が開いたり腕がちゃんと振れなかったりする状態です。
そしてもう一つがいわゆる感覚の欠如であり、これを鍛えるのが非常に難しいので制球力向上は投手にとって地獄の課題なのです。
感覚のズレを修正したい!
とはいえここで諦めるわけにはいきませんから、少しこの感覚の部分のメカニクスをお話ししましょう。
人間のあらゆる関節の動きは「関節覚」という、深部感覚によって制御されています。
「関節覚」というのは、関節がどの程度曲がったり伸ばされたりするかを感知する感覚の事です。
試しに目をつぶって手を横に90度広げてみてください。
・
・
・
どうでしょうか?
大体90度くらいに上げることができたと思います。
この「大体90度くらいかな?」と感知する感覚が関節覚と思っていただければokです。
この感覚は、筋肉や靭帯や皮膚が伸縮した時や、関節表面の動きや関節を包む袋が伸縮することで受容体がその動きを感知して、それを中枢神経に伝えることで成り立ちます。
この強さで1mm筋肉が伸ばされたからこっち方向にこのぐらい動くな!
この強さで1mm靭帯が伸びたからこっち方向にこのぐらい動くな!
関節の表面がこの位の摩擦を感じたからこっちにこのぐらい動くな!
ってな感じのメッチャ繊細な情報伝達が体の中で常に行われているわけです。
で、この情報が正確であればあるほど動きに再現性・正確性が生まれて、同じ軌道で腕が振れるようになってきます。
でもねー、ここまで読んで分かってもらえたと思うんですけど、これどうやって鍛えればいいの?って話でしょ?
そうなんですよ。
関節の感覚というのは鍛えるの非常に難しいんですよね。
だから制球の向上って難しいんです。
武井壮流のトレーニング
まず、同じ軌道で腕が触れているかどうかに関しては、ビタビタに制球が決まった時の映像とダメな時の投球フォーム・リリースポイントがどれだけズレているかを根気強く探るしかないでしょう。
なんかそういう特別な機械があるといいんですがねー。
で、あとは武井壮さんが幼い頃にやっていたというトレーニングを紹介しておきますね。
この武井壮さんが語っていることは、まさに視覚の情報と関節の感覚にはズレがあること意味しています。
正直、かなりいいこと言ってんなって思いました。
で、そのズレを修正するために取り組んだのが、目をつぶって腕の角度を感じる訓練だそうです。
この武井さんのトレーニングは関節覚向上に対するアプローチとしてとても有効だと思います。
あとはこの武井流トレーニングをなんとか投球動作に結びつけて、自己流トレーニングとして昇華させてください。
ファイティンぽ。
まとめ
というわけで、今回は下半身トレーニングの重要性を説いてみました。
冒頭で簡単に説明するとか言っておいて、ちょっと話が複雑になってしまいました。
スンマセン。
なんか疑問があればコメント欄にどうぞー。
ではさいなら。
✳︎元理学療法士のあくまで個人的な意見ですので、参考にする際は自己責任でお願いします。
よろしければこっちもどうぞー。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
お役に立てれば光栄です。
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