小説作家・池井戸潤の作品はなぜ面白いのか?
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社会の縮図がそこにある
こんにちは。
新常です。
今回は表題にもあるように、なぜ池井戸潤さんの作品は面白いのか?というのを考えてみたいと思います。
本を読む習慣がない人も、そうでない人も、池井戸さんの作品を読めば嵌ること間違いないし!
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理不尽を追求した作風
池井戸潤さんが手がけた小説は本が売れない出版不況などなんのその。
次々と大ヒットを飛ばしていきます。
多くの人が魅了される池井戸さんの作品にはどんな秘密が隠されているのか?
私はその疑問に対して一つの答えを見出しました。
それは、「理不尽を徹底的に追求した作風」だからです。
半沢シリーズ他、池井戸さんの作品は行政対民間企業、大企業対中小企業、上司対部下、銀行対取引先と言った、どう抗っても勝ち目のない関係性をモチーフにしている作品が実に多いのです。
その絶対的な主従関係の中にはびこる、無慈悲で理不尽な関係を事細かに描写しているのが池井戸文学の特徴なんです。
社会で生きていく上で日々晒されるストレス、自分一人ではどうにもならない強大な権力、時に「少しやりすぎでは?」と思わせるくらいの徹底した部下への蔑み。
この様な「リアル」な社会を取り上げているのが池井戸さんの小説であり、多くの人にウケた要因なのでしょう。
前半でストレスを溜めまくる
池井戸さんの作品を読んだことのある方、もしくはドラマ「半沢直樹」を見たことがある方はご存知たど思いますが、池井戸さんの作品は前半部分で「これでもか!」という位、主人公に対してストレスを掛けてきます。
事故原因を組織ぐるみで隠蔽され、責任をなすり付けられた中小企業の社長。
(空飛ぶタイヤ)
支店長の悪事により5億円の不渡りの責任を負わされる融資課長。
(オレたちバブル入行組)
組織に侵食され談合を正当化してしまう若手社員。
(鉄の骨)
私の下手な文章で伝わるか判りませんが、このような社会に散在する「理不尽」をこれでもかというくらい主人公に対して浴びせてきます。
読者側としても、主人公に課せられた宿命を受け入れるのが辛くなるくらいの理不尽のオンパレード。
時に読むのがしんどくなるくらいの。
そう、ストレス。
後半で一気にストレス解消!
もちろん、ストレスだらけの作品ではここまで売れないでしょう。
そこには逆転に次ぐ逆転があり、今まで散々溜めてきたストレスを一気に解消させてくれるストーリーがあります。
事故原因を徹底追求し、大企業を屈服させた中小企業の社長。
(空飛ぶタイヤ)
支店長の悪事を暴いた上で5億円の不渡りを見事回収し、支店長を更迭に追い込んだ融資課長。
(オレたちバブル入行組)
談合に対する善悪を説き、常務を説き伏せた若手社員。
(鉄の骨)
基本的に池井戸さんの作品はハッピーエンドなので、最終的には理不尽に打ち勝つわけですが、それまでの過程が非常に濃く、また爽快感を伴っています。
前半で溜めに溜めたストレスを後半で一気に解消する。
伏線を回収するミステリーとは違い、逆転をテーマにして爽快感を与えてくれる。
それが池井戸潤さんの作品なんです。
現実感がないところが良いところ
さて、池井戸さんの作風がどのような物かはある程度お分かりいただけたでしょうか?
そして、池井戸さんの作風を知った時、多くの人がこう思うことでしょう。
「そんなん無理やん」
と。
上司に真っ向からぶつかる部下、大企業を負かそうとする中小企業など、池井戸さんの作品はリアリティーのある設定の反面、実際には無理じゃね?と思わせる設定でもあります。
ですが、それが良いんです。
この方の作品がなぜ売れるのかというと、日常的に起こる理不尽なストレスを「発散」させてくれるからだと思うんですね。
小説を通して擬似体験をして、日頃のストレスを少しでも発散しようと。
実社会で次長が常務に口答えなど言語道断でしょう。
取引先の大企業に歯向かう人間など皆無でしょう。
そこで溜まっていくストレスのはけ口になっているのが、何を隠そう池井戸さんの作品なのです。
まとめ
少しでも池井戸潤さんの作品の魅力が伝わればと思い書きましたが、いかがでしたか?
学生の方はもちろん、特に社会に出た方にはオススメの作家さんです。
読めば爽快、嵌れば痛快!
ぜひ、暇なときに手に取ってみてください!。
では。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
お役に立てれば光栄です。
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