加藤シゲアキの小説「ピンクとグレー」の感想を書評っぽく

公開日: : オススメの小説など

      

イケメンで文才あるとかずるくない?

みなさんこんにちは。
新常です。

表題にもあるように、加藤シゲアキさんの「ピンクとグレー」の感想を書いていくわけですが、そもそも皆さんは加藤シゲアキさんをご存知でしょうか?

あなたがジャニオタなら言うまでもないでしょうが、実は彼、ジャニーズ事務所所属のイケメン作家さん。

そんな彼のデビュー作「ピンクとグレー」を今更ながら拝読しましたので、その感想を。

イケメン?
ジャニーズ?

糞食らえだ。

と、思っているそこのあなた。

加藤シゲアキさん、侮れませんよ。

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素直に面白い!


ピンクとグレー [ 加藤シゲアキ ]

ピンクとグレーのあらすじを超簡単に説明すると、“雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタートさせた幼馴染の大貴と真吾の悲しい運命を描いた物語”、です。

著者の加藤シゲアキさんが芸能人なだけあり、かなり細かく芸能活動の裏側が描かれていたように感じます。
売れたものの苦しみ、売れないものの苦しみ、双方の視点から描かれているので大変読み応えがあります。

「数奇」という言葉がどれほど人間を苦しめるのか、そんな事を考えずにはいられません。

300ページ弱の中編小説ですが、時間を忘れてあっという間に読み終わってしまいました。

アマ◯ンの感想欄では、文章が読みにく!との意見が多かったのですが、私は全く読みにくさを感じませんでした。
むしろ、最近の小説家の中では、かなり読みやすい部類に入るのでは?と思うほど。

確かに、情景描写に拘るあまり言い回しがくどくなったり、慣れな言葉を使ってるんだろなーと思う部分はありましたが、それを補ってあまりある筆勢、話の展開の面白さを感じました。

必然性が弱いかな?

ここからは少しネタバレになってしまうので、まだ原作を読んでいない方は飛ばしてください。

私自身、真吾が自殺をした場面、結構ゾクッときました。
ですが、そのゾックっと感は半分良い意味で、半分が悪い意味。

それまでの展開で、大貴と真吾は距離を置くようになっていました。
しかし、同窓会での再会を機に今一度あの頃の二人の関係へと戻ろうとした最中での真吾の自殺。

「あ〜ぁ、そうきたかー」と思う反面、「え?急に?」といった感じで、どうにも真吾が自殺する必然性が弱いようにも感じたのです。

芸能活動が忙しくて、自分が自分じゃなくなっていく、元の自分を取り戻すために命を精算する。

無理やり解釈すればこのように考えることも可能ですが、それならば、もう少し真吾のバックグランドにも注目した描写が欲しかったなー。

と、思って先を読んでいたのですが、最終章を読んでそれらの描写が登場しなかった理由がよーく分かりました。

実はこの小説の顛末、最終章までたっぷりと引いた伏線を、最終章で一気に回収する構成になっていたんです。

イヤミスの女王・湊かなえさん、伏線の帝王・貫井徳郎さんらが得意とする、伏線を都度回収していくスタイルではなく、最終章の60ページ弱をたっぷり使い、今まで散々引いてきた伏線をきっちりと回収していく、その名も「一掃回収スタイル」だったんです。

しかもその回収の仕方がとてもキレイ。

最終章は自殺した真吾の追悼ドキュメンタリー映画の内容を描いているんですが、その映画の中で真吾を演じるのが幼馴染の大貴。
大貴はせめてもの弔いとして、忠実に生前の真吾の生き様を再現することに拘ります。

そして、大貴が真吾を演じる中で、お互いの気持ちがすれ違っている間に真吾にどういう心境の変化があったのかを、演じながら知っていくわけです。

この“真吾の心境の変化”こそが240ページ前後かけて引いてきた伏線であり、それらを最終章で一挙に明らかにするわけです。

ここから先の展開は実際に読んでみてください。

まぁドキュメンタリー映画の中で大貴は生前の真吾を忠実に再現していくわけで、その結末が如何なるものかは言うまでもないでしょう・・・。

荒削りだけど今後に期待!

私が加藤シゲアキさんに注目し始めたのは、「傘を持たない蟻たちは」のドラマ版を見たことがきっかけ。

確か深夜のドラマ枠だったと記憶していますが、たまたま車を運転中にやっていたのを目にして「オー、なんか面白いなー」と感じたのをよく覚えています。

結局その後の続編を見ることはありませんでしたが、後に原作本を調べたところジャニーズのタレントが書いていると知り、驚いた記憶があります。

で、そこからしばらく経っての、つい先日。

偶々本屋さんで適当に小説を探していたところ、加藤シゲアキさんの名前を見つけ「あーそういえばー」的な感じで傘をもない〜のことを思い出し、結果、ピンクとグレーに行き着いたわけです。

いや、良い出会いでした。

デビュー作らしく、洗練されていない文章、不自然な言葉の使い回し、表現がくどい部分など、粗を探せば沢山見つかりますが、それでも十分に楽しめる作品です。

「ピンクとグレー」、個人的には今年読んだ小説の中でもトップ10に入るくらいの良作!

是非皆さんも「ジャニーズ」という色眼鏡なしで、作家・加藤シゲアキの作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。

書評っぽくない書評で申し訳ありませんでした。

では!

最後まで読んでいただきありがとうございました!
お役に立てれば光栄です。

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